私に贈る言葉
私は学んだ。勇気とは恐怖心がないことではなく、それに打ち勝つことだと。勇者とは恐れを知らない人間ではなく、恐れを克服する人間なのだ。
ネルソン・マンデラ(南アフリカ元大統領・ノーベル平和賞受賞者)
“I learned that courage was not the absence of fear, but the triumph over it. The brave man is not he who does not feel afraid, but he who conquers that fear.”
いつ、どんな場面で発言されたか
この言葉は、マンデラが1995年に出版した自伝『Long Walk to Freedom(自由への長い道)』に記されたものです。
ネルソン・マンデラは、南アフリカで長く続いた人種隔離政策「アパルトヘイト」の撤廃を求めて闘い続けた人物です。その闘いの代償として、彼は1964年から実に27年間にわたって投獄されました。ロベン島の狭い独房での過酷な日々、家族と引き離された孤独、いつ終わるとも知れない絶望——。しかしマンデラはその中で折れることなく、1990年に釈放されると南アフリカの民主化を主導し、1994年には同国初の黒人大統領に就任しました。
自伝の中でマンデラは、共に闘った仲間たちの姿を振り返りながらこの言葉を綴っています。アパルトヘイトという巨大な抑圧に立ち向かい、拷問にも屈せず、命をかけて信念を貫いた同志たち。マンデラはその姿から「勇気の本当の意味」を学んだのです。そして彼自身も「数え切れないほど恐怖を感じたが、大胆さの仮面の裏にそれを隠してきた」と正直に告白しています。
この名言は、27年の獄中生活と生涯をかけた自由への闘いという壮絶な実体験から紡ぎ出された、まさに血の通った言葉なのです。
言葉の意味
私たちは「勇敢な人」と聞くと、生まれつき何も恐れない、鋼のような心を持つ人を想像しがちです。しかし、マンデラはその考えを明確に否定しています。
マンデラが伝えたかったのは、勇気とは「恐怖がないこと」ではなく、「恐怖があるにもかかわらず、それを乗り越えること」だということです。
恐怖を感じない人間は、そもそも勇気を必要としません。本当の勇気が問われるのは、膝が震え、心臓が早鐘を打ち、逃げ出したいと全身が叫んでいる——そんな瞬間に、それでも一歩を踏み出せるかどうかです。
マンデラ自身がまさにその体現者でした。彼は恐れを感じなかったのではなく、恐れを抱えながらもなお、正しいと信じることのために立ち上がり続けたのです。「大胆さの仮面」の裏側にはいつも恐怖があった。その告白があるからこそ、この言葉はどこまでも深く私たちの胸に響きます。
私に贈るメッセージ
新しい環境に飛び込むとき、大切な人に本音を伝えるとき、長年の夢に挑戦するとき——。私たちの人生にも「怖い」と感じる瞬間は幾度となく訪れます。
そんなとき、「怖いと思っている自分はダメだ」と責める必要はありません。恐怖を感じること自体は、人間として自然なことです。マンデラほどの人物でさえ、数え切れないほどの恐怖を感じたと語っているのですから。
大切なのは、恐怖をゼロにすることではなく、恐怖を抱えたまま、それでも前を向くこと。その一歩こそが、マンデラが教えてくれた「本当の勇気」です。
あなたが今、何かに怖じ気づいているなら、それは勇気の入り口に立っている証拠かもしれません。震える足で構いません。その一歩が、あなたの人生を照らす光になるはずです。
